初めてゲルコートというものを使いました。当然、大失敗です。
原因は製品用ゲルコートを雄型、雌型、の両方に使用したこと。 製品用ゲルコート同士がしっかり癒着して型がボロボロになりました。
どうしたらきれいに離型できるんでしょう?
この記事では、雄型→雌型作成といったFRP造形の基本的使い方?で必ず直面する「離型しない恐怖を克服する」実験結果をお伝えします。
動画の方が分かりやすいかも・・・。
目次
破損した型の構造&材料
雄型は内部に発泡ウレタン、外皮に積層用ポリエステル樹脂&#200ガラスクロス積層、最終仕上げに製品用ゲルコート、という構造になっています。
製品用ゲルコートは耐水ペーパーで2000番まで研磨後、コンパウンドでバフ掛けで磨きあげています。
もちろんワックスを何度も塗り込みました。
これなら絶対離型すると思ったのですが。先の写真のとおりでした。
この失敗をバネに「離型剤と樹脂の組み合わせによる離型具合の違い」を実験で確認してみることにしました。
FRP離型の実験方法
型用ゲルコートの平板、製品用ゲルコートの平板を用意。
これらの上に、型用ゲルコート、製品用ゲルコート、積層用ポリエステル樹脂を積層して離型の仕方を確認してみます。
離型剤はワックス(ボンリース)とPVAの2種類を試しました。
離型剤にワックス使用
次の5パターンの樹脂の組み合わせを実験。
1 型用ゲルコート 対(型用ゲルコート、製品用ゲルコート、積層用ポリエステル樹脂)
2 製品用ゲルコート 対(製品用ゲルコート、積層用ポリエステル樹脂)
離型剤にPVA使用
次の5パターンの樹脂の組合せを実験。
1 型用ゲルコート 対(型用ゲルコート、製品用ゲルコート、積層用ポリエステル樹脂)
2 製品用ゲルコート 対(製品用ゲルコート、積層用ポリエステル樹脂)
実験結果
型用ゲルコート | 製品用ゲルコート | 積層用ポリエステル樹脂 | ||
型用ゲルコート | ワックス | 固着感あり | 〇 | 〇 |
〃 | PVA | 〇 | 〇 | 〇 |
製品用ゲルコート | ワックス | 〇 | 剥離発生 | 〇 |
〃 | PVA | 〇 | 〇 | 〇 |
一言でいいますと、「離型剤にワックスを使用した場合、同種類のゲルコート同士は使用しない」 ですね。
離型の具合は文章では伝えられないので動画でご覧ください。 Youtube動画
離型テストをして気になった点
製品用ゲルコートについて
製品用ゲルコートはミクロの気泡がたくさんあり密着しやすい、との説明をネットで発見しました。
硬化&研磨後の見た目は型用ゲルコートと同様艶があり密着するようには思えませんでした。
(先の白い原型の写真をご覧ください!) 新品の家電製品の様に輝いています。一生懸命磨いたんです・・・。(涙)
ですが、この実験用に「型用ゲルコートの平板」と「製品用ゲルコートの平板」を作ったときその違いが分かりました。
研磨前の表面が明らかに違います。とくに手触りが。
研磨前の製品用ゲルコートは「見た目はつや消し」「感触はサラサラ」です。
大げさに言えば、素焼きの陶器のような感じで液体がしみ込みそうです。
そのままワックスを数回塗り込んでもサラサラ感はなくなりませんでした。
製品用ゲルコートはミクロの気泡がたくさんあり密着しやすい・・・はどうやら事実のようです。
型用ゲルコートについて
対して、型用ゲルコートは研磨する前から艶々です。当然ワックスを塗り込めばピカピカです。
ですが離型剤がワックスの場合、型用ゲルコート同士では密着性が高いようです。
かなりしなっているのが分かるでしょうか。
ドライバ―が差し込まれている部分のみ浮き上がり盛り上がっています。このままドライバーから手を離すとドライバーが戻って来ました。
ドライバーを押し込んでいくと、パンッと離型するのですが、しなりが強く内部のガラス繊維が何か所か白く剥離しました。
平面同士の離型で「ここまでしならないと離型しない」ということは立体的な型では離型は難しそうですね。
離型剤がPVAの場合、型用ゲルコート同士でも良好に離型します。
あまりしなっていないのが分かるでしょうか。
離型剤について
今回の実験ではワックス(ボンリース)とPVAを比較しました。
PVAの塗布は手間ですが確実な離型を考えるとPVAがおススメです。
失敗は許されないという大事な工程ではPVA一択でいこうと思います。
ワックスとPVAの離型具合の比較
透明な積層用ポリエステル樹脂だと離型具合がよく分かります。
離型剤=ワックス の場合
離型剤=PVA の場合
ドライバーの差し込み位置と離型範囲を比べてみてください。 PVAの場合、わずかな差し込みで広範囲が離型しています。
気持ちいいくらいの離型です。思わず笑みがこぼれます。
PVAは洗濯糊で代用
PVA離型剤(大抵は青い液体で販売)は結構高価です。成分は洗濯糊とほぼ同じらしいのでazarashi工場長は洗濯糊を代用しています。
洗濯糊原液はトロトロしており使えませんので希釈して使っています。
PVAの厄介なところは・・・
1 型がツルツルだとPVAがはじかれて膜にならない。初めは何度か刷毛で擦ってなじませる必要がある。
2 PVAはすぐに乾き膜になりますので何度も刷毛を往復させていると乾いた膜が剥離してぐちゃぐちゃになる。出来るだけ少ない往復で塗布する必要がある。
3 刷毛のムラで型が凸凹になる。
というわけで、PVAはエアブラシで塗布しています。 後々、PVAの塗布方法についても実験してみたいと思います。