標準的なFRPの成型手順は、「目的物と同形の雄型を作成」→「雄型を反転させた雌型を作成」→「雌型の内側にFRPを張り込んで目的物を成型」という過程をたどります。
ちょっとした部品を作るときにこの手順を踏んでいるとFRPを使うのが億劫になってしまいます。一度きりの成型の場合、型の作成にかける手間は省きたいものです。
もちろん、FRP成型が上手くいくかどうかの80パーセントは型にかかっていますので、適当な型を作成するわけにはいきません。
そこで、手間を省きつつもキチンと目的物を成型したいときに使っている方法が、雌型を省略した「くり抜き成型法」です。
私が簡易FRP成型でよく使う方法で、FRP成型後に内部の雄型をほじくって取り除くので「くり抜き成型法」と呼んでいます。
くり抜き成型法でラジコン飛行機のモーターマウントを成型しましたのでこれを題材に説明します。
中空品の成型に便利なくり抜き成型法
純正モーターマウントは滑らかな機体の曲線に沿った3次元曲面を持った円筒状のパーツです。
写真右側の白い樹脂製のパーツです。
このような中空のパーツは「くり抜き成形法」が得意とする形状です。
この方法は、雌型省略というメリットに加え左右分割して貼り合わせる過程がないため、強度面で安心感があります。
くり抜き成型法 手順1
破壊可能な素材で雄型を作ります。
例:バルサ材、発泡スチロール、スタイロフォーム、厚紙など。
今回の題材では、バルサ材を使っています。(写真左)
最後に、表面を100均のアルミテープで覆います。100均の薄いアルミが望ましいです。
離型剤としてシリコンスプレーを吹いておきます。
手順2
雄型にFRPを積層します。雄型に成型していくので積層の最終層が製品の表面になります。つまり凸凹な製品表面になるので最後にサンディングする必要があります。
よって、硬化後のサンディングを考慮して少々厚めに積層します。
自分は欲しい積層数+1層を積層しています。
ラジコンパーツのような小物の作成には#100ほどの薄めのガラスクロスだと作業しやすいです。
ホームセンターなどで入手しやすいのは#200です。
手順3
表面をポリエチレンシート(養生用ビニールや、ゴミ袋など一般のサラサラしたフィルムでよい)で表面を覆います。
3次元曲面に対して伸縮しないシートを張り付けるので当然あちこちにシワが寄りますが、気にしないでください。
できるだけシワが少なくなるよう丁寧に覆うよう努めますが、あまり神経質ならなくて大丈夫です。
シワの部分は樹脂が膨らんで硬化することになるので後でサンディングすればOKです。
凸はサンディングすればOKですが、凹みは要パテ埋が必要になるので手間が増えます。
手順4
硬化後、雄型をくり抜きます。ここでアルミテープが真価を発揮します。
真っ当な手法で雌型をFRPで作成すると離型剤に結構悩まされます。なかなか離型しないことがあります。
が、アルミテープは気持ちよくペリペリと剥がれてくれます。簡易なFRP成型には100均のアルミテープを活用してみてください。
シリコンオイルを塗っていなくてもアルミは簡単に離型します。
手順5
表面のフィルムを剥がしサンディングします。この過程は根気で乗り切ります。つまらないです。
サンディング中の写真はありませんでした。いきなり完成写真です。
サンディングし目的の曲面が出てきますとテンションが上がりますね。
今回は塗装はせず、カーボン調のシートをドライヤーで温めながら張り付けてみました。
なかなか美しく仕上がりました!
このくり抜き成型法はどんなものにも使えるわけではありませんが、結構便利な方法だと思います。
FRPの成型はパーツの形状・サイズに合わせて型の製法を使い分けるものですから、いろいろ挑戦して自分がやりやすい方法を見つけるのも楽しみですね。