作業日誌 工作メモ

FRP雌型ー 石膏とFRP積層のどちらがよいか比較してみる

ただいま大いなる悩みに直面しております。
写真の原型をどうやって中空のFRPにしようか・・・?と工法の思案に取りつかれてしまいました。

FRP原型

これまでFRPの作成には次の3つの工法を使ってきました。

1 雄型(発泡ウレタン)+外皮をアルミテープ(離型剤となる)でカバー。→ FRPをハンドレイアップ。 → 硬化後に中身をくり抜く。

2 雄型(発泡ウレタン)をFRP(ゲルコート仕上げ)で覆い表面を研磨。カチカチの原型を作製。→ 雌型を石膏で作成。→ 石膏雌型からFRP製品を作製。

3 雄型(発泡ウレタン)をFRP(ゲルコート仕上げ)で覆い表面を研磨。カチカチの原型を作製。→ 雌型をゲルコート+FRPハンドレイアップで作製。 → FRP雌型からFRP製品を作製。

3番が一番手間がかかるので避けたいんです。
毎度のことながら一個しか作らないパーツの成型に最適な方法はないかなあ・・・と必ず悩んでしまいます。

写真の原型を使う前に、3番の工法を回避すべく使ってきた1番&2番の工法を頭の整理のために文字化してみます。

1 雄型に直接FRPを積層

この方法が一番工程数が少なく簡単です。成型後に「正確できれいな表面」を必要としない場合に使う方法です。

作業の流れは・・・
① 原型は発泡体などくり抜ける素材で作製。発泡体を塗装用のマスキングテープでカバー。さらに100均で売っている薄いアルミテープでカバー。
② ガラスクロスやカーボンクロスを積層。
③ 硬化後、製品開口部をリューターなどで開ける。
④ 開口部からラジオペンチなどで発泡体をくり抜く。

こんなイメージです。

デメリット1 ガラスクロスの浮きが発生しやすい。

繊維の真っ直ぐに戻ろうとする力が、屈曲部で繊維を型から剥がす方向に働きます。
そのため出隅の曲率がきついとクロスが浮いてしまうことがあります。

デメリット2 発泡体くり抜きが大変。

発泡体を力技でくり抜くのでちょっと根気が要ります。

対して、アルミテープの離型性はかなりよく、発泡体を取り除けばアルミ+マスキングテープの皮が気持ちよく剥がれてくれます。

デメリット3 単純な形状、なだらかな形状にしか使えない。

形状が複雑、開口部が狭い・・・など場合によってくり抜きが難しい場合があります。

2 石膏で雌型を作製


型取りといえば石膏です。水と混ぜるだけで簡単に型取りできるので敷居の低い素材です。

FRPで雌型を作製する手間を省くために使いたくなる方法。

一回きりしか使用しない雌型をFRPで積層していると湧き上がるむなしい気持ちを回避するため石膏を使いたくなるのですが、結構デメリットがあります。

デメリット1 石膏は柔らかく欠けやすく、一回きりの使い捨て

硬化後一週間以上乾燥させないとカチカチの表面になりません。 乾燥後も爪でひっかくと簡単に削れてしまいます。

よって、FRP雌型やシリコン雌型のように「パカッと離型」&「研磨不要の製品表面」は期待できません。

また、石膏表面の細かな気泡に樹脂が食いつき、離型の際に石膏型の表面が剥離してしまうことがあります。型のエッジ部分が欠けることもあります。

そのため石膏型は一回きりの型として使ってきました。 1回目の製品積層で表面が荒れるので「FRP積層がイマイチだからもう一回成型しようっ」というわけにはいきません。

デメリット2 石膏雌型からFRPの離型が難しい。

ポリエステル樹脂は水分があると硬化不良を起こします。
石膏雌型から水分を除去するための乾燥時間がかなり必要です。1週間ほど乾燥させてもポリエステル樹脂が硬化不良を起こす可能性があります。

【写真】一週間乾燥させた石膏(ハイストーンN)に黒ゲルコート+ガラスクロス積層(離型剤はPVA+ワックス)

石膏型もガラスクロス側も表面が「うねうね」しているのがわかるでしょうか。 
「うねうね」は未硬化部分です。触ると手に付きます。

きれいな離型のための乾燥時間はかなりの手間。自分の手は動かしませんが自分の時間が費やされます。

デメリット3 石膏って意外と高価。

FRPと比べて安上がりと思っていたのですが、計算してみますと・・・・そうでもない!

このような石膏雌型に必要な石膏の量と費用を計算してみます。 続けてFRP型にかかる費用も計算してみます。

石膏で雌型作製の費用

30cm×10cm×5cmの箱型を2cm厚の石こうで覆うと1832㏄必要。
石膏1kgで820㏄の体積になるので、1832÷820=2.23kgの石こうが要ります。

吉野石膏のハイストーンNは5kgで4480円。
石膏雌型の費用は、4480円×2.23Kg÷5kg=1998円 となります。

FRP積層で雌型作製の費用

FRPをガラスマットで3プライ、厚さは4㎜と仮定(ちょっと樹脂量を多めに見積もります。)

〇ポリエステル樹脂のお値段
この立体を厚さ4㎜で覆う樹脂の体積は、296㏄。
ポリエステル樹脂の比重は約1.1なので、必要重量は296×1.1=326gの樹脂が要ります。

積層用ポリエステル樹脂は2kgで3600円。
3600円×0.326kg÷2kg=587円

〇ガラスマットのお値段
この立体の表面積(5面)は761㎠。ガラスマットは1プライにつき761㎠。
3プライなので761㎠×3=2283㎠のガラスマットが要ります。

ガラスマットは1m×10mで4879円。(100cm×1000cm=100,000㎠)
4879円×2283㎠÷100,000㎠=111円

FRP積層雌型の費用は587円+111円=698円 となります。

石膏のほうが1300円高い? なんか計算がおかしいかな??

石膏型よりFRP型の方が安価で時短であった

石膏はFRP型のように積層の手間がないのでお安く簡易な型というイメージがあったのですが、こう比較してみますとちっとも安くありません。

「高価な割にきれいな表面が得られない」加えて「乾燥のため時間が必要」と、あまりメリットがないことが判明しました。 

なぜこんなこと気づかないでいたの・・・でしょう。(ユーミンの歌が頭の中でグルグル回ります・・)

こうやって比較してみると、この道の先輩方が雌型をFRP積層で作るのがよーくわかりました。

ああ、すっきりしたー!

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