アルミで強度のいらないカバーや箱モノを作るときは、なめ付け(溶加棒を使用せず母材だけで溶接)しています。
溶加棒を入れるのは少々難しいので、なめ付けだけの溶接は「失敗しないかな・・」と消極的にならず気楽に作業に入れます。
本日の工作メモ
条件
TIG溶接機で2㎜厚のアルミ板の出隅の溶接
【溶接対象】
2mm厚アルミ板600mm×245mm と 2mm×15mmアルミフラットバー
【タングステン電極】
セリタン2.0mm~2.4mm
仮付け時の設定
電流120A、ACバランス20程度、パルスなし
仮付けの作業メモ
初めの仮付け時はアルミ母材は冷めているためかなりの電流が必要です。
ステンレスなどは40Aほどでも溶接出来るのに対して、100A以上とはかなり大きく気持ちビビッてしまいます。
こんなに電流上げてしまうと、融点の低いアルミはあっという間に穴が開くのではと不安になります。
が、かえって中途半端に100A程度にすると「付け合わせた母材の片方だけが溶けてしまったり」、「両母材が溶けるものの母材同士の隙間が増える方向に溶けてしまう」など隙間が広がり、2mmほどの薄めの板だと穴が開き、溶加棒を使用せざるを得ない状況になってしまいます。
初めは一気に120A~125A程度で両母材を溶け込ませます。このくらいの電流なら1秒前後で仮付け出来ます。
※ 仮付け後の設定は、熱による歪みを考慮するかしないかで2とおりに分けています。
ひとつの辺を連続して溶接出来る場合は「その1の設定」で、熱歪みを考慮して小分けして溶接する場合は、「その2の設定」で溶接しています。
仮付け後の設定 その1
電流95A、 ACバランス20程度
パルスあり・・・パルス周波数=ダイヤル12時の位置(真上)、パルスのオンオフ比率=ダイヤル12時の位置(Amazonで販売されているTIG200P溶接機の場合)
パルス時の電流の表示はこの溶接機の場合わかり難いです。そのため、この95Aという説明は初めにパルスオフの状態でメイン電流を95Aに設定しパルスオンにした状態を指しています。
メイン電流のダイヤルはそのままパルスオンにして、BACKGRAOUND電流のダイヤル位置をメイン電流の3分の2程度にしています。
強弱の差が大きいとアークがキレイに飛ばず溶接個所が荒れます。
その1の作業メモ
両母材が仮付けで橋渡しされたらその後は簡単です。
上記なめ付けの設定にすると、およそ1秒弱で強弱を繰り返してくれますので溶け落ちる心配がなく安心してトーチを進められます。
強弱の繰り返しにより、溶接跡が波々になりかっこよくなります。大して腕がなくても意外ときれいに魅せることができます。
仮付け後の設定 その2
電流95A、ACバランス20程度、パルスなしで手動パルス使用(自分でオンオフする)。
その2の作業メモ
パルスなしでなめ付けする理由
熱による歪みを避けるため、一度に5センチ程度ずつと小分けにして溶接する際パルスを使用すると小分けした溶接の終端(溶接をやめた所)が汚くなります。
これを避けるためにパルスなしで溶接しています。
すでに次の溶接を重ねてあるため分かりにくいですが、矢印の所が一か所色が違うのがわかると思います。
艶がないざらざらした溶接跡がどうしても発生してしまいます。これが5センチ毎に残ることになりあまり美しくありません。
そこで手動でオンオフを繰り返して溶接します。するとパルスなし溶接の終了地点はキレイな艶のある溶接跡となります。
私の知識では理由は説明できませんが、なぜかそうなります。
薄板の熱による歪みについて
今回の溶接対象のように薄板で面積がある場合、熱で激しいゆがみを生じるため一つの辺を連続して溶接することは絶対に避けましょう。
面倒でもガマンしてチビチビ溶接します。一気にいくと材料がゴミになります。
薄板の場合、反るというより3次元曲面的な歪みが生じます。
「溶接後に加熱→冷却で歪み取り」は私にはできませんでした。ほとんど不可能ではないかと思います。
プロならできるのかもしれませんが・・・
まとめ
アルミ2㎜厚板同士(ある程度の面積あり)の出隅の溶接の場合
〇 仮付けは120Aで一気に溶かし合わせる。
〇 その後の95A程度でなめ付けする。熱による歪みを考慮して小分けに溶接する。
〇 パルスありだと溶け落ちを心配せず楽になめ付けできるが、小分けにした溶接個所の汚れ荒れが気になる場合は、パルスなしで手動でオンオフする。