溶接を始めてしばらくすると自動遮光溶接面が欲しくなります。
溶接機の付属している溶接面は、たいてい遮光ガラス(濃い緑のガラス)を使ったモノで、アークが飛ぶまで手元が暗くてよく見えません。
そこで、アークが飛んだ時だけ暗くなる自動遮光溶接面となりますが、・・・検索するとピンキリ。
2000円程度のモノもあり安物買いの銭失いにならないか心配になります。
「安かろう悪かろうだ」という低評価な商品レビューもあります。
この記事は、溶接を週一ほどたしなむ程度の私が、安価な自動遮光溶接面を試して分かったことをまとめたものです。
目次
自動遮光溶接面は安価でも使えます
結論は、「趣味レベルと限定すれば3000円程度でも十分使える」です。
が、その中でもちょっと高めの液晶フィルターが「自然な色合いと謳っているタイプ」なら間違いありません。(以降、自然色タイプと呼びます)
この自動遮光溶接面はAmazonで3600円ほどで購入しました。
その他、フィルターの色以外に必要だなと思う条件は・・・、
・遮光度合いが調整できるタイプである。
・顔を全部カバーできるタイプ(サングラスタイプでない)である。
です。
数千円で購入できる自然色タイプはこれらの条件も満たしています。
自然色タイプがいい理由
安価な自動遮光面はフィルターを通してみる色が緑がかっています。(以降、緑色系と呼びます。)
自動遮光という機能は果たしてくれますが、緑がかったフィルター越しの世界は暗視ゴーグルの画像のようでちょっと暗い気持ちになります。(これは好みの問題ですね)
対して、自然色タイプは黒いサングラス越しの景色と似た色あいで、格段にみやすいです。
緑色系を使ってきて買い替えたら、見やすくて小躍りしちゃうくらい。
比較動画
また、感度、遮光の度合い、の調整が可能です。(調整機能なしは販売されていない。)
まぶしくなく、かつはっきり溶接個所が見えたほうがいいので、調整可能であることは経験の少ない初心者ほど大事です。
安価な緑色系をおすすめしない理由
液晶のムラが気になるからです。
液晶のムラとは、通電時に一部だけ濃くなることです。白熱球を見て観察するとわかります。
商品レビューでもムラを指摘する意見があります。私が使ってきた自動遮光フィルターは2つともムラがありました。
先の比較動画のとおりです。
片目の視線上にたまたまムラがあると、片目で見てるのと同じ状態になり、かなり使いにくいです。
これまで使ってきた自動遮光面が見づらかったので、交換用の自動遮光フィルターを購入したことがあります。
単品で2000円程でしたのでちょっとはいい製品だろうと思ったら大間違い!さらにムラが強く古い方に戻したことがあります。
この手の安価な自動遮光フィルターはムラがあるものと思って購入したほうが良いと思います。
また、あまり安いモノだど遮光度合いを調整できないタイプもありますので要注意です。
小電流でアークが弱い時、調整ができないタイプだと暗すぎてよく見えません。
ムラが気になる場合と気にならない場合がある
1 ムラが気になる場合
TIG溶接で小物、薄い板の溶接をする。
→ 安価な自動遮光フィルター(緑系)はやめた方がいいと思います。
2 ムラがあまり気にならない場合
アーク溶接機(溶接棒を使用するタイプ)、半自動溶接機などバチバチと火花を飛ばす溶接をする。
→ 安価な自動遮光フィルター(緑系)でも不満は少ないと思います。
3 理由は・・・(私のわずかな経験からですが)
自動遮光フィルターの液晶には、先の動画のようにどこかしら色が濃くなっている場所があります。
決まった場所ではなくランダムにあり個体差があります。
このムラが片目の目線上にたまたま存在すると距離感がつかめなくなります。片目で見ている状態ですね。
TIG溶接で薄板やアルミを溶接する場合、タングステン電極と溶接対象との距離を1㎜、2㎜と可能な限り近づけたり、薄板の溶け具合を至近距離で確認することがよくあります。
そのため、片目がかすんだ状態は距離感がつかめず大問題です。タングステンが溶融池に接触し溶接中止→タングステン研磨し直しとなってしまいます。
「ムラがあるとこんな溶接面、使えるか~!」となってしまいます。
対して、アーク溶接や半自動溶接の場合、30cm~40cmくらい溶接対象と溶接面は離れており、そこまで至近距離で溶接個所を見ることはありませんし、溶接棒が1㎜ほど前後にブレても溶接は継続できますのでムラは気になりません。
自然色タイプにもムラはあります
先ほどの動画のとおり、自然色タイプにもムラがありますが、なぜか緑色タイプ程は実用時には気になりません。
数千円レベルの自動遮光フィルターには完璧を求めてはいけないみたいです。 ムラは絶対許せないという方には遮光ガラスの方がいいと思います。
遮光ガラスのメリット
遮光ガラスのほうがいい場合もあります。
TIG溶接で薄板のとき、電流が弱い(15A程)場合です。
この場合、自動遮光面がアークに反応しないことがあります。
そのため近くに白熱電球を置いて強制的に自動遮光させるしかないのですが、これでは始めから暗くて遮光ガラスと同じになってしまいます。
また、前述のとおりムラがあるため溶融箇所の様子が見づらいんです。(安価な緑色系の場合)
遮光ガラスだとアークが飛ぶまでは暗くて大変ですが、放電が始まれば両目ではっきり見えて意外と溶接しやすいです。
サングラスタイプについて
私の知識ではなぜサングラスタイプが販売されているか分かりません。
(ガス溶接などアークではない用途向けなのでしょうか?)
一度サングラスタイプをかけてTIG溶接で2時間ほどステン薄板溶接をしたことがあります。
翌日、顔が真っ赤になっていました。季節外れの赤ら顔はハズカシイです。
夏、日焼けしたあとに皮がポロポロ剥けるのと同じ状態に。かつ、日焼けより痛かったです。
冬のスキースノボ焼けみたいにタヌキになります。ただし赤いだけで褐色にはならないみたいです。
溶接アークからの紫外線は電流量など条件により異なりますが、場合よっては太陽光の数十倍になるようです。(環境省:紫外線環境保健マニュアル)
溶接は、紫外線の発生源のすぐそばで浴びるので、TIG溶接で顔を近づける場合は要注意です。
ぜひ顔を全面カバーできるタイプを使いましょう。
まとめ
たまにしか溶接をしない方も、毎週末溶接する方も、4000円程度から購入できる自然色タイプの自動遮光フィルターをおススメします。
DIYレベルの使用なら後悔ないと思います。
「めったに使わない事にお金はかけられません!」という場合、安価な緑色系はムラがあることを覚悟で購入するのもありかと思いますが、お値段差は2000円程度です。
いい道具はいい結果を生みます。見やすい溶接面はいい溶接につながります。うまく溶接できると嬉しくなります。プラス2000円の価値はありました。