この記事は、木工用のバンドソーでも刃を変えれば鉄を切断できるんでは・・という甘い発想で始まった、「木工用バンドソーで鉄を切るための改造」をまとめたものです。
工作好き、DIY好きが購入するバンドソーといえば、プロクソン、リョービ、SK11(藤原産業)の卓上バンドソーではないかと思います。
私もSK11のSWB-200Nという型番のバンドソーを購入しました。
DIYが進み金属まで手を出すようになるとバンドソーで鉄、ステンレスを切断したくなります。
海外のDIY動画を見ていると、金属パイプ、丸棒、角棒、平板、など素材の切断では必ずと言っていいほどバンドソーが出演しております。
これに触発され「作業小屋の隅で眠っている木工用バンドソーを金属切断に活用しよう!」ということになりました。
目次
初めに結論
問:木工用バンドソーで金属用ブレードを使用することは出来ますか。
答:使用できません。ただし、アルミの切断ならそのまま金属用ブレードに交換するだけで使えます。
バンドソーで鉄・ステンレスを切断されたい方は、金属用として販売されているバンドソーの購入をおススメします。
金属用にブレードに替えればいいんじゃなない、という安易な発想は、結局、時間と費用を要する大々的な改造に発展してしまいました。
この改造は旋盤、フライス盤、溶接機などを使用するちょっとヘビーなDIYです。
木工用バンドソーで金属用ブレードを使用できないわけ
それはブレードの周速が違うからです。
周速とはブレードが流れる速度です。大抵、分速何メートル(○○m/min)と表示されます。
SK11の木工用バンドソーの周速(実測)は次のとおりです。
(この回転計(類似品3000円程)、測定対象にアルミテープを貼れば大抵のモノは図れます。安くて便利です。)
モーター回転数 1470rpm ホイール(ローター)はモーター直結
ホイール直径21cm、一周は21cm×3.14=66cm
よって、周速は、66cm×1470rpm=970m/min
となります。
対して金属用はかなり遅く周速80m/minほどのものが大半です。10分の1ほどの速度ですね。
高速で動く木工用バンドソーに金属用ブレードを使うとどうなるか
アルミは切断できますが鉄・ステンレスだとブレードが一分間くらいでダメになります。
周速が早すぎて刃が溶ける?すぐ熱で丸まってしまいます。
比較的安価で販売されているステン用の溶接済みのブレード(ステンレス用と明記されているモノ)を何本か買ってみましたが、どのメーカーのブレードでも1分ほどで刃先がダメになってしまいます。
初めは、安物買いの銭失いかと思いましたがそうではありません。
国産有名メーカのバイメタルを奮発して買いましたが、結果は同じでした。
試しに購入したのは、フナソー コンターマシン用ブレードBIM0.6X6X14X16M 14mm BIM6C です。(2万円位で売っています)
この国産バイメタルブレードでも木工用バンドソーで使用すればアッという間に刃がだめになります。
バンドソーで金属を切断するには
鉄・ステンレスを切断するためにはブレードが80m/minほどでゆっくり回転することが必須です。
金属用バンドソーを買うか、木工用バンドソーを改造し回転速度を落とすしかありません。
そこで、大変な手間になりますが木工用を金属用に改造することにしました。
低速で回すためにモーターを交換
100v用の調速、調光器ではバンドソーに使用されている誘導モーターは調速することはできません。
そこで、電動自転車用モーターを利用してみることにします。
Amazonを閲覧していると減速機付きの電動自転車モーターと調速回路がセットになっているモノが販売されています。
使えるかどうかは試してみないと分かりませんので、早速買い物かごに投入しレジに行きます。
主な購入パーツ
・電動自転車用モーター本体 24V250W(減速ギア付き)
・PWM制御モーター速度コントローラー(入力DC 12V~60V出力20A 1200W)
・15A 24V DC 直流電源( AC-DCコンバーター100V→24V)
・アルミタイミングプーリー(XLタイプ72歯、内径12mm)
・三ツ星タイミングプーリー(XLタイプ32歯、内径10mm)
・内径12㎜のベアリング
・シャフトは炭素鋼45Cの12㎜
これらを使って減速プーリーボックスを作成し元々のモーターと置き換えます。
減速ボックスの作製
電動自転車用モーターは回転数3300rpm、減速比9.78→出力軸は337rpm。
さらに32Tと72Tのプーリーで2.25:1に減速すると149rpm。
SK11の木工用バンドソーのホイールの外周は66cm。
66cm×149rpm=98.3m/min(最大周速)となり、金属用バンドソーの一般的な周速80m/minに近づきます。
また、PWM制御のため0~98.3m/minで無段階の変速が可能となります。
作成過程
電動自転車用モーターのチェーン用のスプロケットをタイミングプーリーに換装します。
軸穴は10㎜で販売されているためモーターの主力軸11㎜に合わせて旋盤で拡張します。
被駆動側のアルミプーリーに回り止め加工をします。
ここで以前作ったCNCフライス盤が役に立ちました。
ベアリングを固定するホルダーをアルミ板から作成します。
ここでも自作CNCフライス盤が大活躍!
主軸となるΦ12㎜の鉄の丸棒(S45C)にキー溝加工をします。
最後に、モーター、プーリー、タイミングベルトを収める減速ボックスを、鉄板で作成します。
3.2㎜厚の黒皮鉄板製の簡単な箱です。結果が分からないものにあまり手間ひまはかけず、実験という位置づけです。
切り出した鉄板を溶接すれば完成。やっつけ仕事的ですが、ベアリング、シャフト、モーターの脱着が出来れば問題ありません。
作成した減速プーリーボックスはこれです。
レトロな昔の機械って感じになりました。動画(youtube↓)だと分かりますがAmazonで購入したアルミタイミングプーリーはあまり精度がよくなく偏心して回転します。
大きめのタイミングプーリーが格安で飛びついたのですが、やはり難あり・・軸穴が若干傾いているようです。
ゆっくり回転する機械ですし、バンドソーブレード側プーリー(オリジナル)がブレるわけではないのでOKです。
試運転させて気づいたのですが、この直流モーター+PWM制御は低速トルクが結構強いです。
電動自転車用だからでしょうか。人間のペダルをアシストするので回転よりトルクが大事ですので当然といえば当然ですね。
かなりゆっくり回転させても手の力では止められないほどトルクがあります。
電動工具に使われている100Vモーターだとこんなにトルクはありません。
この四角い鉄のプーリーボックスを元々のモーターと置き換えれば完成です。
改良型バンドソーを使ってみて
今回の工作はいい改良でした。今後この改良型バンドソーは役に立ちそうです。
この速度で回転していれば、ブレードが摩耗することなく鉄・ステンレスを切断してくれます。
こんなことも知らず木工用の速度でブレードを摩擦させあっという間に摩耗させてすいません。
今回の工作過程、鉄・ステンレスの切断の様子を動画にまとめてみましたので、時間のある方は参考にどうぞ。
今回の工作から次の点を学びました。
(ググればわかることですが・・・経験から学びました。)
・金属用バンドソーは木工用バンドソーの10分の1ほどの速度でがゆっくり回転しており、ブレードを交換しても木工用で鉄・ステンレスは切断できない。
・バンドソーは丸棒、パイプなどの棒材の切断に向いている。板モノ(特に薄板)の切断には向いていない。
・金属板を直線カットするならチップソーがよい。
・ジグソーと違い刃が往復せず一報方向に流れるので振動がすくなく静かに切断できる。
高速切断はできませんが、刃が少しづつ確実に切断してる感触があります。バンドソーが静かに「余裕だよ」と言いながら切断してくれているようです。
金属を切断する電動工具を色々試してきましたが、万能マシンっていうのはありませんね。
棒・パイプ材ならバンドソー、板モノならチップソー、くり抜きならジグソーやプラズマカッター、と使い分ける必要があります。
だんだん道具が増えていきますが・・・、適正な工具はいい結果を生み、いい工作に繋がり、いい工作はいい人生につながります。
思ったとおりに作業が進むと嬉しいですね。