突然閃いたクーラント飛散防止装置の実験にハマってしまいました。 結局、失敗なんですけど(笑)楽しかったです。
動画の方が分かりやすいかもしれません。
クーラントの飛散とは
ここでいうクーラントとはフライス作業でエンドミルに吹き付ける切削用オイルの事。 エンジンの冷却水じゃないですよ。
高速回転しているエンドミルと切削材の間に吹き付けて「冷却」「潤滑」「切り屑除去」を行います。
私が使っているのは比較的安価なエマルジョンタイプ。水道水に1:20で混ぜると牛乳のように白くなるタイプのクーラントです。
クーラントを回転するエンドミルに吹き付けると当然吹き飛ばされ、あたり一面水浸しになってしまいます。こんな感じです。↓

写真は水で実験中の様子ですが、カメラのレンズに水滴がたくさん付いていますね。 これで吹き付け開始数秒後の様子です。
この状態が1時間以上の切削中ずーっと続くので飛散防止は必須です。
水まくノズル
そこで閃いたのが水まくノズル。
台所で蛇口からの水をスプーンに当てると「水が幕状に広がる現象」を応用できないかと・・・。
こういう事です。

エンドミルが円筒状の水の幕の中に入っています。 噴水みたいできれいですね~!
見ているだけで楽しいです。 子供時代に帰った気分になります。(笑)
この水の幕のなかで切削すればクーラントの飛散を防げるのではと妄想したのですが、残念ながら効果はあまりありませんでした。(泣)
こちらが実験結果でございます。

左:エンドミルにクーラントを吹き付けていない状態。
右:エンドミルにクーラント吹き付け開始後の様子。
水まくは飛散するクーラントに接触し破壊されてしまいます。 シールドが耐えきれません!って感じ。質量のある物質を防ぐバリアーが実現しないわけですね。
飛んでくる物体を防ぐにはシンプルに丈夫な壁を置くのが一番です。費用対効果がバツグンです!
結局、今まで使ってきたこちらのフィルム式に戻すことになりました。

タコみたいで格好悪いですが、これが一番効果がありそうです。 誠に残念。
水まくノズルの試作品たち
結果は期待外れでしたが、水まくを生成するための実験は楽しかったです。
こちらが水まくノズルの試作品たちです。

10個以上作ったでしょうか。 こういう時に3Dプリンターが大活躍です。 こんなにたくさん手作業で試作品を作る事は出来ません。 心が折れちゃいます。
振り返ってみるとおおまかに3種類の内部構造を持つ「水まくノズル」を試作しました。
第1世代
写真右側の白い試作品が初めに作った第1世代です。
これらは、内部の水の流れがよろしくなく完全なる失敗でした。 「まく」が全周の半分くらいしか生成されず、かつ多量の水を必要とするため方針転換。
第2世代
内部構造を変更しノズルの隙間を狭めた第2世代です。

こちらの試作品は「まく」が生成されるものの「不均一」だったり、内部水流の変化により「まく」が時々途切れてしまいました。(紫色のパーツは、2台のプリンタ―で印刷していたので色違いなっただけで意味はないです。)
水は左右の接線方向から流入するため内部でターボのように水が高速回転し、それにつられて水まくの回転が速く遠心力で飛散しがちになります。
この激しい水流を抑えるべく内部にこのような突起を設けてみました。(第2世代改)

これで遠心力問題は解決しましたが、突起の形状に合わせて水まくが「薄い所と厚い所」が発生してしまいます。
そして水まくの薄い所から「まく」がときどき途切れる現象が発生してしまうんです。
「円周方向の水流から水まくを生成」はやめた方がよいのでは・・・ということで第3世代に移行します。
第3世代
外観からは基本形状は同じに見えます。

隙間は0.6㎜以上に拡大しました。
「狭い隙間から噴出させることで水まくを生成する」という思想をやめました。
ここまでの実験で「隙間が狭いと僅かなゴミが混ざっただけで水まくが途切れてしまう」ことが発覚。 出来るだけ隙間は広めが望ましいことが分かってきました。
断面図をご覧ください。

上図左からの水は円の接線方向に進入するので第2世代と同様に回転しています。
が、底部から噴き出す直前の水路をご注目ください。 いったん中心方向に向かいその後外周方向へ流れます。
これにより水流は半径方向(かつ水平方向)の流れが強くなります。 そして水流は底部の外周壁に衝突し下方に向かって膜状に噴出します。
ちょうど「蛇口からの水がスプーンに当たって膜状になる」を90度ずらして再現している状態です。
この複雑な構造を3Dプリンターで一気に印刷するのはむずかしいため、いくつかのパーツに分けて印刷しています。

こういった精度が必要なパーツを簡単に作れるって本当にありがたいです。 頭の中で妄想したことが簡単に現実世界に出現させられるって、子供の頃の自分がみたらびっくりだろうなあ。
クーラント吹き付けノズル
第3世代の「水まくノズル」には水まくの生成を妨げないよう内部にクーラント吹き付け用水路が生成されています。 前掲の断面のとおりです。
こういった内部構造も3Dプリンタ―だと実現しやすいですね。
私の作品は足元にも及びませんが、AIで設計されたロケットモーターとして有名なこちらのエンジンのような複雑なモノを自作できたらいいなあと夢見ています。(笑)

引用元:LEAP71ホームページ
このエンジン2週間ほどで作製されたとか説明されていたようですが・・・これは人間業ではないですよね。宇宙人??
まとめ
いろいろ実験した結果、もともとのフィルムを使った飛散防止(タコみたいやつ)に戻すことに。
「水の幕でクーラントの飛散を防止する」という当初の妄想は実現しませんでしたが、「3Dプリンタ―を使ってのモノづくり」を楽しめましたので満足感でいっぱいです。
ああ・・、やり切ったって感じですかね。